ありふれた恋を。
夏休みも大部分が過ぎ去った8月の半ば、仕事を終えて帰宅するとリビングに大きなバッグが置かれていた。
「荷物多くない?」
『そう?そんなに重くないよ。』
楽しそうにハミングしながらキッチンに立つ有佐が歌うように答える。
明日から1泊2日、2人で大阪へ行く。
どこにも連れて行ってやれないと思っていたけれど、誰も知り合いのいない場所まで行けば良いのだと思い切って遠出することにした。
行き先も全部俺が決めてしまったけれど、それを伝えたときの有佐は本当に嬉しそうで、おかげでずっとご機嫌だ。
「なぁ、バッグこんな大きくなくて良いんじゃないのか。」
有佐が持って来たバッグを持ち上げてみると想像よりかなり軽くて、それ程荷物は多くないように思えた。
『お土産いっぱい買って入れなきゃいけないでしょ?』
「どんだけ買うつもりだよ。」
家族には和哉と香奈さんの旅行に付いて行くと言ってあるらしい。