ありふれた恋を。

邪魔じゃないの?と随分言われたそうだが和哉と香奈さんとの口裏合わせも万全だと本人は満足そうだ。

2人の同棲生活もどうなることかと思っていたけれど、和哉はあまり帰って来ないしそれなりに順調に進んでいるらしい。



「俺も準備するかな。」

『先生、ちゃんとチケット持ってね。』

「はいよ。」


旅の目的はサッカー観戦だ。

俺がテレビでサッカーを観ていると有佐が1度生で観てみたいと言ったことがきっかけになった。

ならば大阪に新しくできたサッカー専用スタジアムに行こうとチケットを取った。


サッカーを辞めた直後は悔しくて試合も観れなかったけれど、有佐と出会って安定した生活を送るようになってからは穏やかな気持ちで試合を観れるようになった。

プロにはなれなかったけど、すっかり諦めがついた今、やっぱり好きなものは好きなままだという前向きな気持ちだけが残っている。



「高校の頃のチームメイトがさ、そこに入ったんだ。」


そんなことを振り返っていたからか、チケットを確認していた有佐にもうひとつの目的を漏らしていた。



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