ありふれた恋を。
『えっ?プロになったの?』
有佐が分かりやすく驚いた顔をする。
プロになったということと、俺が自分から過去を話したことの両方に驚いているのだろう。
「そうだよ。大学選抜で一緒だった奴もいっぱいね。でもそいつはなかなか試合に出れなくて、いろんなチームを転々としたけど今もまだ社会人リーグでサッカー続けてる。」
『へぇ、すごいね。』
素直に感心したように呟いた後、ふっと心配そうな表情を見せる。
怪我をして辞めた俺のことを想ってくれているのだと分かって、自然と笑みがこぼれる。
「プロにならなかった奴は今、サラリーマンになってる奴も居れば俺と同じように教師になって少年サッカーのコーチをしてる奴も居る。」
有佐の手からそっとチケットを抜き取って眺める。
「なれなかったんじゃない。ならなかったんだ。皆自分で自分の人生を選んだ。だからきっと、それぞれの道で幸せにやってると思うよ。」
なぜこんな話をしたのか自分でも分からなかった。
プロになれなかったとずっと思い続けてきた俺が。