ありふれた恋を。
『ひゃー!すごい!』
翌日は気持ちいいくらいの快晴だった。
大阪の暑さは強烈だったが、それを吹き飛ばすくらい夏波が元気だ。
スタジアムに到着するとその大きさに圧倒されたのか変な歓声を上げている。
「そのテンションで富士山も見てほしかったね。」
『まぁまぁ、それは帰りのお楽しみということで。』
せっかく新幹線から富士山が綺麗に見えていたにも関わらず、夏波は乗った直後から爆睡しそのまま富士山を通り過ぎた。
新幹線に乗るまで駅でキョロキョロと人目を気にしていたから神経を使ったのだろう。
見たことのない眼鏡をかけて帽子を被り、念の為にと顔まで隠していた。
そこまでさせてしまったことを思うとあまり責められず、その分ここで楽しんでくれれば良いと思う。
『ねぇすごい!スタジアムなんて初めて入った!』
スタジアムグルメのたこ焼きやカレーなどを買って席につくと、その臨場感に夏波がまた感動の声を上げる。
夏休みということもあって観客の入りも良く、人で埋め尽くされたゴール裏は壮観だ。