ありふれた恋を。
放課後、里沙に付き合って図書室に来た。
図書室に近いあの部屋に、今先生はいるのだろうか。
『ごめんね、付き合わせちゃってさ。』
「ううん、いいよ。何借りに来たの?」
『えっとね……あ、滝本先生。』
「え?」
里沙が指差した先を見ると、生徒に囲まれた先生がいた。
男子が3人。
女子が2人。
その中には2組のあの子もいる。
里沙は反応しておきながら特に興味がないらしく、もう本探しを再開している。
私は話の内容が気になって、本を探すフリをしながら先生達に近付いた。
『先生ってさ、堅いんだよね~。絶対結婚できないよ!』
輪の中心にいた男子の発言に、思わず頷いてしまう。
本当に、その通りだと思う。
『えぇ~。それでも私は先生と結婚したいけどなぁ。』
そう言ったのは、2組のあの子。
軽く言ってるけど、瞳は真剣そのもの。
『先生、彼女いないの?』
すかさず隣にいた女子が聞いた。
きっと彼女はあの子の親友で、あの子が先生を好きだと知っているのだろう。