ありふれた恋を。

普通生徒の本音。


夏休みが終わり、9月もあっという間に過ぎ去ろうとしている。

この2ヶ月はは私たちに様々な変化をもたらした。


先生のことを弘人さんと呼ぶようになったし、2人で旅行にも行った。

楽しくて嬉しくて、とても大切な時間だったのに、あの日から私の胸の中にひとつの塊が残っている。

それは寂しさなのかもしれないし、不安なのかもしれないし、ただ単なる嫉妬なのかもしれない。


今までずっと大丈夫なフリをしてきた、私が知らない頃の弘人さんが居ること。

その弘人さんを知る人が居ること。

前の、彼女さんのこと。



『何辛気くさい顔してんの。』


お弁当を広げながら1人そんなことを考えていると、どこかから声が飛んできた。



「彩ちゃん。」


既に少し齧られている大きなメロンパンを持ってドサリと私の横に座り、私のお弁当を見やる。



『いらないならもらうけど?』


私のお弁当はまだ手を付けていないままだ。

きっと冗談だろうとは思うけど、はいどうぞと渡してしまっても良いような気がした。



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