ありふれた恋を。
冷静な思考とは裏腹に、心臓はバクバクと派手な音を立てている。
先生、彼女いるのかな…。
『彼女なぁ……いないよ。』
『うぇぇぇ!いないの!?』
図書室に男子生徒の声が響き、先生が『声が大きい!』と注意した。
彼女、いないの…?
本当に、いないの…?
『何ニヤついてんの?』
「わっ!」
いつの間にか隣にいた里沙に指摘されて、思わず頬を触る。
…ニヤついてたかな。
だって、先生が彼女いないって言うから…。
『じゃあさ、先生!好きな人は?好きなタイプは?』
明らかにテンションが上がった2組のあの子が早口で先生に聞いて、私も思わず聞き耳を立ててしまう。
『…なーにやってんだか。先生にあんなこと聞いたって意味ないのに。ねぇ?』
呆れたように言う里沙の声に、先生の声は掻き消されてしまった。
「え?…うん、そうだよね。」
私は気になります…なんて言えないから思わず同意してしまう。
でも、“先生にあんなことを聞いても意味がない”という里沙の言葉はとても正しい。