ありふれた恋を。

『せっかく会ったんだし飲み行かない?』

「いいよ。」


あまりにもあっさりと答えたことに自分で驚く。

サッカーを辞めて、瑠未と別れて、それ以来その当時の友人たちとは意図的に連絡を断っていたから。

何も考えずに答えられたのは、今の生活に充実感を覚えているからかもしれない。



『何か勢いで誘ったけど大丈夫だったか?金曜だし予定とかあったろ。』


近くの個室居酒屋に入り、ビールをごくごくと呑んだ賢太が聞く。



「あぁ、大丈夫だよ。」


夏波には帰りが遅くなるかもしれないから先に寝ててとメールを送った。

昼休みの様子を思い出して何か話があったのかもしれないと思ったが、明日は土曜日だし泊まっていくだろうと気軽に考えていた。



『なんだよ、彼女とか居ないのか?』

「いきなりだな。」

『お前が今幸せかどうか確認しとかないと昔話ができないんだよ。』


あぁそうか、とひどく納得する。

賢太は当時のチームメイトの中でも仲が良かった方で、瑠未とのことも全て知っている1人だ。



< 213 / 264 >

この作品をシェア

pagetop