ありふれた恋を。
『良かったじゃん、良い子に会えて。』
「うん。良い子だよ、本当に。俺なんかより全然大人。」
掃除も洗濯も料理も、何もかも頼りっぱなしだとはさすがに白状できない。
「俺ずっとサッカー辞めたときのままだったんだよな、たぶん。でも今はもう何ともないんだわ。昔のこと全然思い出さなくなった。」
『そうかー。人って人で変わるもんだな。』
本当に、俺は夏波で変わった。
夏波が俺の止まっていた時間を動かしてくれたんだ。
『本当久々に会えて良かったわ。』
その後も他愛のない話をし合い、そろそろお開きにしようかという雰囲気の中で賢太が少し考えるような表情をする。
『幸せなんだよな?今の彼女と。』
「あぁ、そう言ってるだろ。」
『好きなんだよな?彼女のこと。』
「当たり前だろ。」
答えが決まっているようなことを確認して、賢太が恐る恐る口を開く。
『じゃあもう時効だと思うから言うけど…』
その先なんて全く予想できないのに、なぜか身体に力を入れて身構えてしまう。