ありふれた恋を。

『その人の力なんだろうな。結婚してから雑誌で特集とか組まれるようになったらしいんだけど、それが今厳しくなってきてるみたいだわ。』

「なんで?」


賢太の言葉が流れるように頭を通り過ぎて行く中で、なんとかそれだけを返す。



『枕営業…的な?仕事の為に有名なカメラマン引っ掛けて結婚したみたいな感じで、結構風当たり強いみたいだぜ。』


何もかもが自分とはかけ離れた出来事のようで、これが元彼女の現在だということが不思議でならない。



『まぁ出会って半年で結婚して、そっから仕事増えたんだからそう言われるのも仕方ないのかもしれないけど。』

「随分と詳しいんだな。」

『あぁ俺、今も枝里と続いてるから。』


その名前を聞いて納得した。

賢太が大学時代から付き合っている彼女の枝里ちゃんは、そういえば瑠未と仲が良かった。



『枝里も瑠未が弘人と別れてから距離置いてたんだけど、最近急に連絡来るようになったらしくて。業界内に友達とか居ないんだろうな。』


華やかな世界にひとり。

これまでの遠い印象から一転、その姿だけは簡単に想像することができた。



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