ありふれた恋を。
「先生、いるなら返事してくださいよ。」
『ごめん、なんか無視しちゃった。』
頭を掻きながら小声で呟く先生が可愛くて、愛しさがこみあげる。
「入っても、いいですか?」
『いいよ。』
部屋に入りドアを閉めると、また2人だけの空間。
「先生、彼女いないんですね。」
部屋の静けさに、いきなり直球をぶつけてしまった。
『なんだ、盗み聞きか?』
「う、ううん!たまたま聞こえてきただけです!」
…いいえ、盗み聞きしました。
だって気になるんだもん。
『ははっ。いいよ、本当のことだし。』
「えっ?…本当にいないんですか?」
『いないよ。できる気配もないかな。』
気配も、ない…。
『と言うより、欲しいとも思わないんだ。彼女って。』
欲しいとも思わない?
え…もしかして…?
「先生って、そっち系ですか?」
『ちょっ…真顔でそんなこと聞くなって!そんな訳ないから!変な誤解するな!』
「もーう、冗談ですよ。」
冗談に決まってるのに、先生はまともに受け取ってしまう。
真面目なんだなぁ、やっぱり。