ありふれた恋を。

早めに仕事を切り上げて学校を出る。

夏波に今から帰ると連絡をしようとスマホを開くとちょうど着信音が鳴った。

画面には知らない番号が並んでいる。

心当たりはないが、ここのところたまにかかってくる番号だった。

もしかしたら仕事関係かもしれないと1度出てみることにする。



『やっと出てくれたね。』


その声が聞こえた瞬間、早歩きしていた足がピタッと止まった。



「瑠未…?」


自分が思っていたよりもトゲのある声が出た。

何度も何度も聞きたいと思い、何度も何度も聞きたくないと思った声。


どうして今このタイミングで電話なんてかけてくるのか。



「なんで俺の番号…。」

『なんでって、消してないからに決まってるでしょう。もしかして…弘人は消しちゃってた?』


消していた。

夏波と出会って、夏波だけを大切にすると決めて。



『ねぇ、今から会おうよ。』

「は?」


別れてからの2年間なんて存在しなかったような、あの頃と同じトーンに寒気がする。



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