ありふれた恋を。

「先生、いつから彼女いないんですか?」

『まだ続くんだ、その話。』


ただ純粋に気になることを聞いたら先生は困ったように笑って、大学を卒業する少し前に彼女と別れてから、今までいないということを教えてくれた。

別れてから『もう2年になるかな』と言った先生の表情はとても切なく苦しげで。

何かを思い出しているような、だけどそれに必死で蓋をしているような、そんな複雑さを表していた。



「あ、そうだ!先生、思い出したんですよ。」

『え?何をだ?』


なんとなく話を変えた方が良いような気がして話題を変える。

先生はもうそれ以上話そうとしなかったし、私もそれ以上聞いてはいけないような気がしたから。



「ほら、宿題!私が途中で止めちゃってたやつです。」

『あぁ、あれな。』

「宿題してるときにお母さんがメロン切ったよって言うから、食べに行ったんです。」

『え?そんな理由?』

「はい…たぶん、それで満足してそのまま寝ちゃったんだと思います。」


『はははっ』と笑う先生からは、さっきの冴えない表情は見られない。


だから余計に気になってしまった。

先生の過去の恋が。



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