ありふれた恋を。
完璧教師の意志。
【hiroto side】
人生で初めての土下座をした。
顔も見たくないと言う和哉を説得して会うチャンスをもらい、誠心誠意頭を下げた。
和哉が目撃した瑠未とのキスに俺の気持ちは無かったことや、彼女が居るときっぱり告げてきたことを話して何とかお許しをいただいた。
次はないからな、という脅し文句付きで。
分かってるよそんなこと。
今度こそ絶対、夏波を傷付けたりなんかしないと誓った。
結果だけじゃなくて、経緯も過程も全部話して信じてもらいたいと。
『先生。』
再び夏波が部屋に通うようになって穏やかな日々が続いていた頃、放課後の廊下で伊吹に声をかけられた。
これから部活なのだろう、練習着姿でスパイクを持っている。
『…順調ですか。』
声をかけたものの何から話せばいいのか分からないといった様子で遠慮がちに聞く。
いつもまっすぐな伊吹には珍しかった。
「おかげさまで。」
なんのことかは聞かなくても分かる。
俺が知らない間に夏波に想いを告げていた伊吹は、少し気まずそうに俯く。