ありふれた恋を。
『もしかしてだけど、彼女って生徒…?』
探るような瑠未の声に思わず足を止める。
『大丈夫だよ、誰にも言ったりしないから。』
少し先で立ち止まった瑠未が、悲しそうな顔で言う。
瑠未ならやりかねないと俺が思ったことを分かっているのだろう。
「ごめん。」
『疑われても仕方ないよね…。さっきも子供だとか酷いこと言ってごめん。でも本当に誰にも言わないから。』
そう真剣に訴える瑠未の表情は初めて見るものだった。
結婚して柔らかくなった部分が垣間見えるようで、俺が立ち止まっていた2年間の長さを思う。
「不安にさせてばかりなんだ。寂しい思いさせて、傷付けて。周りにはもっと自由に付き合える男が沢山居るのに、教師の俺なんか窮屈だと思う。でも俺が絶対放したくなくて…。」
『大丈夫だよ。』
瑠未の声がとても優しくて、固くなっていた心がほぐれる。
『弘人のこと大好きだよ、彼女。さっき見てて思った。この子には敵わないって。』
解放してあげてください、そう言った夏波の声を思い出す。