ありふれた恋を。
『毎日このお弁当食べられる先生が羨ましいわ。』
パンの袋を開けながら彩ちゃんがしみじみと言う。
親友の里沙は専門学校へ進学し、たまにしか出会えなくなった。
この大学で友達もできたけれど、同じ大学に進学した彩ちゃんと過ごすことがいつの間にか増えていた。
呼び方もあの変なあだ名ではなく呼び捨てになって、今ではすっかり親友のようだ。
高校を卒業して弘人さんと“先生と生徒”じゃなくなってから、私は里沙と彩ちゃんに弘人さんと付き合っていることを話した。
驚いていたけれど良かったねと言ってくれたことが嬉しくて、今では相談にも乗ってもらっている。
『今度家遊びに行ってもいい?彼氏も一緒に。』
「うん、もちろん。」
彩ちゃんは高校の頃から片想いしていた瀬川くんとこの春から付き合い始めた。
大学は別々だけどよく瀬川くんが迎えに来たりしていて、とても順調そうに見える。
『先生が夏波にデレてるところ見たいしね。』
「デレないから。」
茶化すように言う彩ちゃんの言葉を否定しながら、でも実際は結構甘いんだよなとひとり思う。