ありふれた恋を。

先生の背中から目が離せない。

先生。今、どんな顔してるの?



「どうして私に想われてるのが幸せなんですか?」


背中に問いかけると、先生が振り返った。



『うーん、俺の想像だけどね。有佐って、まっすぐだから。好きな人ができたらその人しか見えなくなりそうだなって。』

「はぁ…。」

『つまり、一途って事だよ。』


一途…。

確かに先生しか見えていないけど、片想いでも一途って言えるのかな。



「じゃあ先生は、仮に、仮にですよ?私に想われてたとしたら…幸せですか?」


ほんの微かな望みと持てるだけの勇気を持って、先生に聞いてみた。



『そうだなぁ。一途に想われるのは、悪くないかな。』


さらりとお手本のようなはぐらかし方をして、先生はまた私に背を向ける。



「…先生。私、もう帰りますね。」

『おう、気を付けて帰れよ。』


そんな風に軽く言う言葉がどれだけ私の胸を締め付けるか、先生知ってる?



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