ありふれた恋を。

ドアを閉めて、暗くなり始めた廊下をゆっくりと歩く。

『そいつ幸せだなって思って』

先生が言った一言に、今も胸がドキドキしてる。

…ただの社交辞令だよね。


でも、先生はなんであんなこと言ったんだろう。


私に想われてる人は幸せって。

じゃあ、先生も幸せって言ってよ。


…って、無理か。

私が先生を好きだってことは知らないんだから。


でもそんな風に言ってもらえるなら、知られてもいいかも。


気付かれたくないような、気付いてほしいような…。

矛盾する気持ちをどう整理していいのか分からなくて、小さくため息をつく。


それにしても今日の先生は、前にあの部屋で話した時とちょっと違ってたな。


なんとなく、距離が近いような気がした。

というか、先生から近付いて来てくれた感じ。


なんか、気になる。


先生の冴えない表情も、話してくれたことも。


なんか、気になる。



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