ありふれた恋を。

考えを巡らせ過ぎて、先生の様子とともに私の気持ちもよく分からなくなってくる。

いっそのこと、思いきりぶつかってみようか。

でも彼女いらないって言ってたしな。

でもそれ以前に、私は先生の彼女になりたいの…?



『有佐?』

「え?」



1人悶々としているところに後ろから声をかけられて、振り返るとそこには伊吹くんがいた。

部活終わりなのか、髪や額に汗が滲んでいる。


サッカー部のエース。
皆の人気者なのに誰にでも分け隔てなく接する気さくな良い人。

栗色の短い髪がよく似合ってて、一通りモテる要素が揃っている感じだ。



『何やってんだ?もうこんな時間なのに。』

「ちょっと図書室で本探してて。」


そこまで言って気が付いた。

言い訳用に借りた本を、あの部屋に置いて来てしまった。



『図書室かー。俺全然使ったことねぇや。てか誰か使ってんの?』


いつの間にか、というよりはごく自然に、伊吹くんは私の隣に並んで歩き出した。

考えてみれば、こんな風に2人きりでじっくり話すのは初めてに近い。



「うん、何人かいたよ。あ、滝本先生とか。生徒に囲まれて大変そうだった。」

『あぁー弘人先生は人気者だからな。』


伊吹くんは先生のことを名前で呼んでるんだ。



< 28 / 264 >

この作品をシェア

pagetop