ありふれた恋を。
考えを巡らせ過ぎて、先生の様子とともに私の気持ちもよく分からなくなってくる。
いっそのこと、思いきりぶつかってみようか。
でも彼女いらないって言ってたしな。
でもそれ以前に、私は先生の彼女になりたいの…?
『有佐?』
「え?」
1人悶々としているところに後ろから声をかけられて、振り返るとそこには伊吹くんがいた。
部活終わりなのか、髪や額に汗が滲んでいる。
サッカー部のエース。
皆の人気者なのに誰にでも分け隔てなく接する気さくな良い人。
栗色の短い髪がよく似合ってて、一通りモテる要素が揃っている感じだ。
『何やってんだ?もうこんな時間なのに。』
「ちょっと図書室で本探してて。」
そこまで言って気が付いた。
言い訳用に借りた本を、あの部屋に置いて来てしまった。
『図書室かー。俺全然使ったことねぇや。てか誰か使ってんの?』
いつの間にか、というよりはごく自然に、伊吹くんは私の隣に並んで歩き出した。
考えてみれば、こんな風に2人きりでじっくり話すのは初めてに近い。
「うん、何人かいたよ。あ、滝本先生とか。生徒に囲まれて大変そうだった。」
『あぁー弘人先生は人気者だからな。』
伊吹くんは先生のことを名前で呼んでるんだ。