ありふれた恋を。

『あ、てかさ!弘人先生って昔から人気者だったんだよ。知ってる?』

「へぇ、そうなの?昔っていつ?」


先生の話題に飛び付いたことに気付かれないように、精一杯の普通さで答える。



『あ、ちょっと待ってな。』


伊吹くんは何やら嬉しそうな表情でリュックのように背負っていたスクールバッグの中をガサガサと漁り始める。



『これこれ!ほら見て、ここ。』

「これって…」


伊吹くんが見せてくれたのは、あるサッカー専門誌。

日付を見ると、3年前になっている。


伊吹くんはあるページを開き、指をさす。

そこには“大学選抜選手一覧”と書かれていて、その下に“DF 滝本弘人”という見慣れた名前があった。


そしてその隣には、ユニフォームを着て整列した選手達の写真が掲載されている。


これって、先生…?



『ビックリした?』

「うん…だって先生、サッカー経験は特に無いって言ってたから。」

『だよなー だから俺も超ビックリした。こんな過去があったなんてさ。サッカー巧い意味がよくわかったよ。』


伊吹くんの声を聞きながらも、私は雑誌から目を離せずにいる。

今よりちょっとだけ若く見える先生が、そこに写っていた。


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