ありふれた恋を。
『夏波、聞いてる?』
「えっ?ごめん、聞いてなかった。」
お昼休み、
いつも机を合わせてお弁当を食べている親友の飯島 里沙(イイジマ リサ)の声で我に返る。
危ない危ない、また先生に見惚れてた。
1週間前に席替えをしたばかりの窓際の席は、外で男子生徒たちとサッカーをしている先生の姿が良く見える。
だからついつい見てしまう。
毎日毎日飽きもせずによくやるな…なんて思うけど、授業の時とはまた違った先生を見られるのは楽しい。
先生、サッカー部の顧問でもないのにすごく巧いんだよなぁ。
サッカー経験は特にないって言ってたのに、サッカー部の人たち相手に普通にやってるんだもん。
さすがというか何というか…
ちょっとムカつく。
格好良くて頭も良くて運動神経も良いなんて、そんなのズルイ。
ムカつくしズルイんだけど、先生には嫌味がない。
気取ることもなければ自分に酔うこともなくて。
だから皆に慕われるんだろうな。