ありふれた恋を。
「ねぇ伊吹くん。私サッカーってよく分からないんだけど、これってすごいことなの?」
知りたい。
先生の過去を知りたい。
『そりゃすげーよ。大学選抜なんて、そう簡単に選ばれるもんじゃないし。それに他のメンバーは今ほとんどプロになってんだぜ。』
「そうなんだ…。」
『その中でやってた弘人先生はすげーよ。なんで辞めちゃったのかはわかんねぇけど、俺マジでサッカー部の顧問してほしいもん。』
先生、そんなにすごい選手だったんだ…。
でも、なんで隠してるんだろう?
…何か、あったのかな。
あっ。
そういえば…。
彼女と別れたのが、確か2年前だったよね…。
先生が大学を卒業したのも、2年前。
サッカーを辞めたのも、2年前…?
何か関係あるのかな…。
って、それは考えすぎか。
「てか伊吹くん、なんでこんなの持ってるの?」
『あぁ、俺の兄ちゃんもサッカーしてるから家にサッカーの雑誌いっぱいあってさ。暇潰しで昔の読んでたら弘人先生が載っててマジビビッた。』
伊吹くんはそう続けて、スクールバッグを背中に背負い直す。