ありふれた恋を。
「あのさ、伊吹くん。」
『ん?』
「これ、貰ってもいい?」
『え?』
伊吹くんが一瞬不思議そうな顔をしたけど、今はそんなこと関係ない。
「ダメかな?」
『ううん、あげるよ。
皆にも見せてやろうと思って持ってきたんだけど、結局誰にも見せなかったからさ。』
結局誰にも見せなかった、と言う辺りが伊吹くんらしいと思った。
きっと、先生の為を思って見せるのを止めたんだろう。
「ありがとう。貰ってくね。」
『いいけど、…なんでそんなん欲しいんだよ?』
「え、えっとね…」
それは、先生が好きだからです。
なんて言えないしなぁ。
「ちょっと読んでみたくて。こういうの読んだことないから。」
『そっかそっか!結構おもしれーよ!』
「うん、ありがとう。」
ちょうど玄関に着いて、伊吹くんは『じゃあな!』と言って帰って行った。
…先生が載ってる雑誌、貰った。
明日、これを持って先生に会いに行こう。
答えてくれないかもしれないけれど、先生に聞いてみるんだ。