ありふれた恋を。
コンコン―。
放課後、あの部屋のドアをノックした。
バッグの中に、1冊の雑誌を忍ばせて。
『来ると思った。』
前は無視されたけど、今日は先生の方からドアを開けてくれた。
私が本を忘れて帰ったことに気付いているみたいで、『はい、これ。』と本を渡してくれる。
「ありがとうございます。……。」
『…どうかした?』
本をバッグにしまい、代わりに雑誌を掴む。
そのまま出せばいいのに、なかなか手が動かない。
「あっ、あの、先生。」
『うん?』
「中、入ってもいいですか?ちょっと聞きたいことがあって。」
雑誌を掴む手に、自然と力が入る。
『いいけど、今日はすぐ職員室へ行かなきゃいけないんだ。あまり時間がないけど、それでもいいか?』
「はい、大丈夫です。」
中に入ると、先生がドアを閉めた。
私が好きな、2人だけの空間。