ありふれた恋を。

『でさ、お母さんがさ……って夏波!』

「うん?」

『もう、また聞いてない!てか、さっきから何見てるの?』

「べつっ…別に何も見てないよ。」


…あ、噛んじゃった。

里沙は不思議そうな顔で私を見る。

何も悟られないようにと素知らぬ顔でお弁当を食べてみたけど、里沙は何かに気付いたように外に目を向けた。


先生見てたなんてバレてないよね…?



『あっ!わかった!』

「えっ?」

『伊吹くん見てたんでしょ!』

「はっ?」


チラっと外を見ると、先生と一緒にサッカーをしている伊吹くんがいた。


伊吹 晴(イブキ セイ)くんといえば、1年の頃からサッカー部のレギュラーを張る人気者。

同じクラスだから少し喋ったことはあるけど、そんなに接点はない。



「伊吹くん…?」

『伊吹くん格好良いもんねー。わかるよ、見ちゃう気持ち。』


「違うよ」と言いかけて止める。

伊吹くんを見てたってことにすれば、先生が好きだってバレない…?

親友とは言え、先生を好きだということは里沙に言えていない。

伊吹くんなら皆の人気者だから少しくらい見てたって怪しまれないはずだ。


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