ありふれた恋を。
お兄ちゃんのマンションへ着くと、お兄ちゃんが外で待っていてくれた。
「お兄ちゃん!」
『おう、よく来たな。…って、なんだその荷物。』
「明日土曜日だから泊まろうかなぁって。ダメだった?」
『いや、いいけどさ。布団とかないよ。』
「いいよ、私はどこでも。」
1日くらい床で寝たって大丈夫だ。
そう思ったけど、お兄ちゃんが『俺がソファーで寝るか…』と呟いたから何も言わなかった。
部屋に案内してくれるお兄ちゃんの後ろ姿を見て、少し雰囲気が変わったなぁと思う。
大学時代は茶髪だった髪も黒になってるし、たぶん今までで1番短いと思う。
立派な社会人になっているお兄ちゃんの背中が、前よりも広く感じた。
お兄ちゃんの部屋は相変わらず男性の部屋とは思えない程綺麗に片付けられていた。
昔から綺麗好きと言うか潔癖性だったけど、ここまで綺麗だと気を遣ってしまう。
『適当に座れよ。何か飲むか?』
「あぁ、うん。お茶でいいよ。」
床に荷物を置いて真っ白なソファーに座ると、ほんのり茶色く染まったシミを見つけた。