ありふれた恋を。
「じゃあ…」
『有佐の言う通りだよ。あれは、途中までは本当なんだ。』
ふぅっとため息をついた先生に、胸が痛くなる。
私の興味で聞いたばっかりに、先生の傷をえぐってしまいそうで。
仲良くしているお隣さんの妹だから邪険にすることもできない…そんな気を遣わせて嫌々話させてしまってるのかもしれない。
『サッカー選手目指してたって言ったけど…』
そんな風に逡巡している内に先生は話し始める。
私は、それを静かに聞くことしかできない。
『俺が本気でプロを目指せたのは、それを支えてくれてた彼女がいたからなんだ。』
今までで1番、胸に刺さる言葉だった。
支えてくれてた彼女。
きっと今も、先生の心に深く残っているであろう彼女。
『でもな、』
そこで、先生の表情は突然暗くなる。
目を逸らしたくなるくらいの悲しそうな顔。