ありふれた恋を。
『先生!夏波、超かわいいんだよ!さっきね、伊吹く…』
「ちょっと、里沙!」
なのに里沙がポロっと言ってしまいそうになって、慌てて遮る。
あれ…だけど必死で否定したらかえって怪しいかも。
『へぇ、楽しそうだな。』
でも先生は全然興味がなさそうで、そりゃそうだよねと少し落ち込む。
『ごめんごめん。もう言わないって。で、先生何の用?』
フフフ…と意味深な笑みを見せて里沙は先生に話を振る。
なんだか恥ずかしくて先生の顔が見れない。
『あぁ、有佐。この前宿題で出したプリント、最後の方が空欄になってたぞ。放課後解きに来い。』
「えっ嘘?最後までやってなかったっけ?」
『ははっ夏波まぬけすぎ!』
大笑いする里沙に言い返すこともできない。
本当になんなんだ、そのマヌケなミスは。
しかもよりによって先生が担当する国語で…自分で自分のバカさが嫌になる。
でも放課後にまた先生に会えるのは嬉しい。
出会う理由はとても喜べることではないけれど。