ありふれた恋を。

先生の言葉が、自然と頭の中でリピートされる。


今でも忘れられない…
今でも忘れられない……

何度も、何度も。


それはトラウマとして忘れられないのではなく、まだ好きだって意味に聞こえた。



「なんで、」

『…あれ?俺寝ちゃったのか。』


まだまだ聞きたいことが沢山あったけれど、急にお兄ちゃんが起きてしまった。

…空気、読んでよ。



『和哉、俺もう帰るわ。』

「え?」

『有佐、宿題ちゃんとやれよ。和哉、じゃあな。』

『ほぉーい。弘くんまたねー。』


先生は、ほんの今まで重い話をしていたとは思えないくらい、あっさりと帰ってしまった。

ちょっと待って、と思うけれど、目も合わさず出て行ってしまった先生を呼び止めることはできなかった。



『弘くんと何話してたんだ?』

「………。」

『あーれー?無視ですか?…怪しいな~。』


お兄ちゃんの言葉が何も入ってこない。

頭の中がぐちゃぐちゃで、整理がつかなくて。


驚くことばかりを多く聞きすぎてしまったせいで、私の頭はパニック寸前だ。

それに、まだまだ分からないこともある。


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