ありふれた恋を。
『ねぇ、有佐さんって下の名前なんて言うの?』
「夏波だけど。」
『夏波ちゃんか~。じゃあ、なつなつって呼んでいい?』
なつなつ…。
そんなあだ名生まれて初めてなんですけど…。
しかも言いにくくないか?
「うん、いいよ。」
でもそう答えるしかない。
『ありがと!私は倉島 彩(クラシマ アヤ)だから、彩でいいよ!』
自分は普通なんだ…。
「うん、じゃあ彩ちゃんって呼ぶね。…あ、私もう行かなきゃ。」
『そっか。なつなつばいばーい。』
彩ちゃんに小さく手を振り返し、急いで先生の元へ向かう。
倉島彩。
私のライバルかもしれないこの人は、可愛くて天然系だけど、なかなか強者っぽい女子だった。
「はぁ…」
ドアの前に立ち息を整える。
彩ちゃんに遭遇してしまったことは思わぬロスタイムだった。
早く、先生に会いたかった。