ありふれた恋を。

ノックの音が静かに響いた後、先生がドアを開けてくれる。



『おぅ、来たか。』

「はい、来ました。」


なんとなく埃っぽいままの部屋に入り、先生の向かい側に座る。



「土曜日はありがとうございました。」


何がありがとうなのか分からないけど、一応お礼を言っておく。



『あぁ、うん。こちらこそ。』

「なんか私、ちょっと先生に踏み込みすぎたかなって思って…ごめんなさい。」

『いや、いいんだよ。俺が話したんだし。』


先生は優しい。

だから私は、正直に話すことを決めた。



「私、ずっと先生のこと知りたいって思ってました。」

『うん…』

「だから、もっと知りたいんです。」

『もっと?』


先生がどんな顔をしてるのか見るのが怖くて、俯いたままで話し続ける。



「質問してもいいですか?」

『どうぞ。』

「前の彼女さんのことなんですけど…。」


いきなり直球かもしれないけど、そこを聞かなければ意味がないんだ。


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