ありふれた恋を。
『あぁ、』
先生は席を立って窓際へ向かう。
「彼女さんは、プロのモデルになったの?」
『なったよ。詳しくは知らないけどね。』
「そうなんだ…。」
彼女は、夢を叶えたんだ。
純粋にすごいと思う反面、夢を叶えられなかった先生を思うと切なさが込み上げる。
「彼女さんとは、ずっと会ってないんですか?」
『会ってないね、別れてからずっと。』
「今でも忘れられないって…、今でも好きってことですか?」
『好きじゃないよ。』
先生は何の迷いもなく、はっきりと言い切る。
好きじゃない。
なら、忘れられないのはどうしてなのか。
『さすがに気持ちは吹っ切ってるよ。そんなに子供じゃないからね。』
「でも、忘れられないんですよね?」
『それは…いろんな意味で、後にも先にもいないような女性だったから。』
窓の向こうを見る先生の表情は私からは見えない。
ねぇ今、先生はどんな目をしてる…?