ありふれた恋を。
先生は『じゃあ放課後にな。』と言うと軽く手を挙げて去って行った。
やっぱりとても爽やかだ。
もう一度その後ろ姿を見ようと振り返ると、教室を出た所で女子生徒に話しかけられていた。
隣のクラスである2組の子だ。
『先生何してるのー?』なんて首をかしげながら可愛く聞いている。
2組の担任である先生が、授業以外でこの3組にいるのは珍しい。
その子はチラっと教室の中を見てから、先生の腕を引っ張って2組の方へ連れて行く。
…なんか、見たくなかったかも。
あの子が先生をどう思ってるかなんて分からないけど、胸の奥の方に何かがチクっと刺さる。
『モテますなー、滝本先生。』
「そう、だね。」
『伊吹くんと同じくらいモテてんじゃない?』
なんで伊吹くんが出てくるんだろうと思ってから、もしかして完全に伊吹くんが好きだと思われてるのかもしれないと気付く。
でもまぁ、良いか。
伊吹くんと私がどうにかなることなんてまずないんだから、少しくらい好きだと思われていたって何の支障もないはずだ。