ありふれた恋を。
『有佐…。』
「先生、気づかなかった自分が悪いって自分を責めてるんじゃないですか?彼女さんのことが本当に好きだったから、彼女さんを悪者にしたくなくて自分を責めてるんじゃないですか?」
そんなの、苦しすぎるよ。
『有佐は、人の傷みが分かる子なんだね。』
「え…?」
突然そんなことを言われて、言葉を続けられなくなる。
先生はようやくこっちを向いて、心意が読み取れない表情で私を見つめる。
『泣くな。』
「…泣いてません。」
本当は泣いてる。
でもそれを知られたくなくて、俯いてごまかすことしかできない。
いつの間にか、先生が私のすぐ傍まで来ていた。
そして、私の頬の涙をそっと拭う。
『有佐が泣くな。』
冷たい話をしているのに先生の手は温かくて、頬に触れた先生の指に新たな雫が流れ落ちた。
『有佐が泣くなよ。』
「泣いたって良いんです。」
そうだ、泣いたって良い。