ありふれた恋を。
「私は、先生の為になら泣いたって良いんです。だけど…彼女さんのことで泣くのは悔しい…。」
『有佐…。』
先生を傷付けた彼女を許せなくて、だけど先生がその彼女をまだ想っているという事実。
先生が今も、自分を責め続けてる現実。
『有佐、俺はな。』
まだ涙が止まらない私の頭に手を置いて、先生は静かな声で話し始めた。
『確かに、有佐の言う通り彼女を悪者にしたくないのかもしれない。結局俺は彼女の夢を叶えてやれなかった。だから俺が全て背負うことにした。』
「バカ…。」
『うん。バカだな。』
しばらく沈黙が続いた。
先生の手は、まだ私の頭の上だ。
「ねぇ、先生…?」
『うん?』
「もう気付いてると思いますけど。」
なぜ、今この言葉が出てきたのか分からない。
だけど、自然と言葉が溢れてくる。
「私、先生が好きです。」
『…うん。』
「私じゃ、先生を救えませんか?」
まっすぐ見上げた先生の表情は、私には読み取れなかった。
先生はこんな風に、感情を失くした人形のような顔をする人だっただろうか。
私が、先生に感情を与えたい。
喜びや、嬉しさや、幸せを。
それは、叶わない願いですかーーー?