ありふれた恋を。

それはきっと、後者だ。


校庭、教室、廊下。

探しているわけではないけれど、見つけると嬉しい。


この気持ちで確かなものは“恋ではない”ということだけだったけれど。

向き合って話して初めて、元彼女と正反対だから気になっていたということに気付いた。


この子は心の底から純真で、まっさらで、曇りがなくて。

絶対に人を裏切ったり、傷つけるようなことはしないと。

笑顔を見て、一緒に過ごして、常にその安心感を感じていたかった。


好きですと言ってくれた気持ちには応えられないし、この先恋愛感情なんて絶対抱いてはいけない。

だけどその安心感だけは、いつも心に持っていたいと思った。


1日の仕事を終えて学校を出ると、スマホが軽快な音を立てる。

画面を見ると和哉からで、一緒に夕食を食べようという誘いだった。


いつもふらっと部屋に寄る俺を前もって誘うことは珍しい。

何かあったのだろうか。


まさか妹の告白を断ったと早速知られてしまったのか。


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