ありふれた恋を。

『よ、お疲れ様。』


インターフォンを押すとすぐに和哉が顔を出す。

部屋には既に夕飯の良い香りが漂っていて空服を刺激される。



「なんだよ、急に豪勢だな。」


テーブルに並んだ和哉お手製の料理はいつもとは比べ物にならないくらい手が込んでいた。

和哉は家事全般が得意で、いつも部屋は綺麗だし料理もいろんなジャンルを手際良く作る。

そして、そのどれもがもれなく美味しい。



『ちょっと作り過ぎたからいっぱい食べてって。』

「おう、サンキューな。」


料理や食器を忙しなく運ぶ和哉はどことなくよそよそしくて、目も合わせない。

呼び出したことも、やけに豪勢な料理も、この態度も…和哉は何を思っているのだろう。



『あのさ、弘くん。』


その答えに、ひとつずつ近付いている。



『この前、なんかごめん。』

「え?」

『夏波が来てたとき。ついうっかり、瑠未さんのこと言いそうになって。』


あぁ…と気の抜けた声が出た。


瑠未(ルミ)。

俺の、元彼女。



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