ありふれた恋を。

それからの日々は穏やかに緩やかに過ぎて行った。


学校では生徒に誘われるがままにサッカーをし、その度に感じていた心の痛みもどんどん感じなくなっていく。

隠れ部屋に有佐が来ることも、和哉の部屋で出会えることも期待しなくなっていた。



『先生、何見てるの?』


それでもふとした瞬間に有佐を目で追ってしまうことは、完全に無意識なんだと思う。


昼休み、教室の窓から外を眺めていた俺に声をかけてきたのは倉島という女子生徒。

今年担任になってから何かと俺に声をかけてくるようになった。



「別に何も見てないよ。」

『ふーん。』


窓の外には、友人とお弁当を食べる有佐の姿がある。

見ていたことを倉島に悟られないように、とっさに手元のプリントに目を落としてごまかす。



『あ、なつなつだ。おーい!なつなつー!』


同じように外を見た倉島が突然窓を開けて叫ぶ。

倉島が手を振る先にいるのは有佐で、この2人仲良かったっけなと思う。

明るくてクラスの中心的な存在である倉島と大人しい有佐はあまり接点があるようには思えない。


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