ありふれた恋を。
『なつなつって彼氏いんのかな?先生知ってる?』
「知らないよ。」
思わず即答してしまったことを直後に後悔する。
知らないも何も、つい先日告白を受けたばかりだ。
『なーんだ、知らないのか。』
俺のそんな動揺には全く気付いていない様子で、突然興味を削がれたように投げやりになる倉島に少し安堵する。
「なんで俺にそんなこと聞くんだよ。」
『だって、先生なつなつと仲良いじゃん。』
「え?」
うまく切り抜けられると思っていたところに急に放り込まれた一言が、思いのほか鋭く刺さった。
他の生徒の前で有佐と仲良くしている、そんな意識はなかったしそんなことを指摘されるとも思っていなかった。
『あれ?違う?結構よく喋ってるよね。』
「担任だったから。普通だよ。」
『普通。』
先程とは温度が違う“普通”。
ごまかし方がまずかっただろうか。
「昼休み終わるぞ。早く弁当食べろよ。」
タイミング良く職員室に到着し、強引に会話を終わらせる。