ありふれた恋を。
『えー?今日飯島さん休みじゃん。』
だけど今日はその一言が通用しなかった。
いつもは里沙と一緒に食べることを理由に断ってきたけれど、彩ちゃんの言う通り今日は里沙が風邪で休みだ。
クラスも違うのになんで知ってるんだろう。
『たまには良いじゃーん。一緒に食べようよー。』
なんでそんなに私を誘うのか…。
彩ちゃんはいつも男女問わず派手なグループと行動を共にしていて、わざわざ私を誘う理由が見当たらない。
一緒に食べても良いのだけれど、必然的にあの派手なグループも付いてくるのかと思うと気が引ける。
だけど里沙がいない今日ばかりは逃げきれないか…。
『有佐。』
諦めかけたとき呼ばれた名前にすがるように振りむくと、伊吹くんが立っていた。
『何?約束って伊吹?』
伊吹くんが何の用で私を呼んだのかは分からないけれど、彩ちゃんは上手い具合に勘違いしている。
このまま本気にしてくれれば良いけれど、それは伊吹くんに悪い気がして言葉に詰まる。