ありふれた恋を。

『そうだけど。何か用?』


そんな私を横目に何事もないかのように伊吹くんがサラっと言って、更に言葉に詰まる。



『へぇーそうなんだ。じゃあいいや。また誘うね。』


彩ちゃんと言えど伊吹くんには何も言い返せないのか、しぶしぶ去って行った。

全く懲りていない一言を残して。



「あっ、ごめん!何か勘違いされちゃったかも。」

『いいよそんなの。これで良かった?』


我に返って慌てて謝ったけれど、伊吹くんはやっぱり何事もなかったかのようにサラっとしている。

私なんかと、それも彩ちゃんに変に勘違いされて、伊吹くんに良いことなんて1つもないはずだ。



「ありがとう。助かった。」

『あいつなんなの?最近やけに絡まれてるじゃん。』

「わかんない。私何かしたのかな?」


そういえば、伊吹くんと彩ちゃんは去年同じクラスだったっけ。

だけどあまり仲が良い印象はない。



「そういえば、何か用だった?」


絶妙なタイミングで声をかけてくれたことを今更思い出す。


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