ありふれた恋を。

『夏波。』


数日後のお昼休み、いつものように里沙とお弁当を食べていると突然改まった声で名前を呼ばれる。

里沙はさっきまで無駄話をしていたとは思えない程真顔だ。



「どうしたの急に。」

『うん…あのね、ちょっと報告っていうか。』


いつもは適当な場所で食べているのに、今日は人が少ないところにしようと言ってきた理由はこれだったのか。

里沙はお弁当を置いて話す体勢を整えているけれど、それでもしばらく言い淀む。



「なに!本当どうしたの?」

『うん。実はね…彼氏ができまして。』

「えっ?」


心の底からすっとぼけた声が出た。



「え?え!?いつ?誰?」

『先週告白されたの。2組の高井 悠介くん。』

「…ごめん分かんない。」


1年のときも同じクラスじゃなかったはずだ。

2組といえば彩ちゃんと同じクラスだけど、聞いたことのない名前だった。



『だよね、私も知らなかったもん。だから迷ってたんだけど、話してたら良い人だなって思って、昨日返事した。』

「えー!おめでとう!本っ当おめでとう!!」


照れながら話す里沙が可愛くて、私まで嬉しくてたまらない。


< 95 / 264 >

この作品をシェア

pagetop