ありふれた恋を。
『ありがとう。夏波には最初に話したかったんだ。』
「あー、泣きそう。」
『なんで夏波が泣くの。』
里沙は笑っているけれど、私は本当に泣きそうだった。
少し仲が良いとか、その程度の友達だったら嫉妬したり焦ったりしていたかもしれない。
でも里沙はいつも一緒に居て心から信頼できる親友であり、その人の喜びを自分のことのように嬉しいと思える大切な存在だ。
「良かった。本当に。末永く幸せにね。」
『なにそれ、結婚するみたいじゃん。』
今度は2人で笑い合った。
里沙のこの笑顔を、大切にしてくれる人ができた。
そんなたったひとりの人と出会えたことが、なんだか奇跡のように思えた。
『あー言うの緊張した。』
ひとしきり笑い合った後、急に真面目な顔で言われる。
「なんで?」
『よく分かんないけど、夏波最近なんかあったでしょ?』
「え…?」
先生とのことは、まだ里沙に言えていなかった。
最近伊吹くんと一緒に帰るようになったことは話しているから、今里沙が言っていることはそのことじゃないのは明らかだった。