ありふれた恋を。
『見てれば分かるよ。まだ話したくないんだろうなーと思って知らないフリしてただけ。』
「里沙…。」
その気遣いが心に沁みて痛い。
こんなに優しい友達が傍にいるのに、先生のことだけはどうしても話せない。
『良いんだよ全然、話さなくても。でも良いことじゃないんだろうなってことは分かってたから、私だけこんな呑気な話して良いのかなって。ちょっと緊張したんだよね。』
「ごめんね。でも里沙が幸せな話聞けたら嬉しいよ。」
先生に告白してからこんなにも日が経っているのに、まだ消化しきれていない自分に戸惑った。
信頼できる友達にも話せないでいる。
いつまでも前に進めていない自分が嫌になる。
『まぁでも、あの伊吹くんと一緒に帰ってるわけだから夏波は夏波で幸せもんだよ。』
「そんなんじゃないよ。」
こんな私にも明るく接してくれる里沙の存在が、とてもありがたかった。
いつか、先生のことも笑い話として話せる日が来るのだろうか。