ありふれた恋を。

『なつなつー!』

「あ。」


今日もまた聞こえてきた声は彩ちゃんのものだ。

なつなつ、なんて呼び方をする人は彩ちゃんしかいない。



『一緒にご飯食べよ?』


ずっと断っていたからか、ここ最近誘われることが少なくなっていた。

なければないで少し寂しかったりして、久しぶりだし誘いに乗ってもいいかな…と一瞬考える。



「ごめん、約束してるから。」


だけど今日は本当に約束があって、結果そちらを優先してしまう。



『えー?だって飯島さん彼氏できたんでしょ?だったらもう良いじゃん。』

「よく知ってるね…」


相変わらずの情報の早さに驚く。



『だって相手うちのクラスの高井でしょ?いつも一緒にお弁当食べてるよね。』


そうか、高井くんは彩ちゃんと同じクラスだった。

彩ちゃんの言う通り、2人は付き合い始めてから一緒にお弁当を食べるようになった。

たまに3人で食べることもあったけれど、邪魔をしているという気持ちが大きすぎて遠慮している。


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