ありふれた恋を。

『ねぇ、たまには一緒に食べようよー。』

「ごめん!本当に約束あるから。また今度ね。」


粘り強く誘ってくれる彩ちゃんを断ることに少し申し訳なさを感じながら、約束の為に廊下を小走りで駆ける。



「ごめん遅くなった。」


待ち合わせ場所の中庭にはもう伊吹くんが待っていて、お弁当を包む巾着を弄んでいる。



『腹ぺこだよー。』

「彩ちゃんに声かけられちゃって。」

『また?』


そういえば、初めて伊吹くんとお弁当を食べた日も彩ちゃんに声をかけられていた。


里沙が高井くんと付き合い始めてから、私は伊吹くんとお弁当を食べるようになった。

里沙に彼氏ができたと言ったとき、じゃあこれからは一緒に弁当食べれるなと言ってくれた伊吹くんの笑顔は今でもよく覚えている。



『あいつ、この前は俺に声かけてきたよ。』

「え?そうなの?」


彩ちゃんが、伊吹くんに…?

ほんの少し、胸にチクリと刺さるものがあった。


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