ちくわ部
それ以来、教室では奈津さんとよく喋る(?)ようになった。
同じクラスだったというのに、ちくわ部の部室で奈津さんに会った時全く見覚えがなかった理由。
それは単純なもので、席が遠いせいと、奈津さん自身がおとなしくてあまり目立たないからだった。
しかしそんな彼女もだんだん私に打ちとけてきてくれて、徐々に口数が増えていっているのが地味に嬉しい。
といっても、元が口数の少ない子なので……決して会話が『多い』わけではないのだが。
何日か家の都合で部室に顔を出せずにいたが、数日ぶりに空いた放課後。
奈津さんと一緒にちくわ部に向かう途中で、ジン先輩からメールが届いた。
『まるが一年生を連れて来てる。面白い事になりそうだからおいで』
ほとんど用件だけの淡泊なメール。
といってもそこからなんとなくジン先輩の人柄が滲むようだった。
「お兄ちゃん……酷い事してないといいけど」
奈津さんにも同様のメールが届いていたらしく、彼女は携帯の画面を見てから少し不安げに目を伏せた。
どうやらジン先輩は人を弄ったりおちょくったりするのが大好きなようなので、連れてこられたという一年生(と、真崎先輩)に会ったことがないにも関わらず無性に心配になった。
「菊池先輩は……いるのかな」
「……いてもたぶん、お兄ちゃんは止まらないと思う……」
ああ、まだ見ぬ同級生と真崎先輩……無事でいてください。