ちくわ部

「要するに、だ。まるは俺と奈津の仕掛けたイタズラにまんまと引っ掛かったってわけでーす」


ジン先輩はいえーい、と言いながら奈津さんとハイタッチを交わした。

身長差のある兄妹の仲睦まじい光景だったがこの場には正直そぐわない。

奈津さんも、兄であるジン先輩が相手なら結構ノリがいいようだが……これって、真崎先輩だけでなく私もある意味被害者じゃなかろうか。

しかし置いてきぼりを食らった私に、もはや何か言おうという気力は微塵も残っていなかった。


「ぷぷっ、『写メで見たより可愛いね』だってさ。別人なのにー」


「おまっ……あの、えっと……麻衣ちゃん、ごめんね……!」


真崎先輩はジン先輩に何か言おうとしたようだが、それよりも先に私に向かって両手を合わせてぺこぺこと謝ってきた。

こうして見ると本当に童顔だなぁこの人……ジン先輩と同い年のはずなのに、兄弟だと言っても通じそうだ。

『かっこいい』より『かわいい』寄りの顔立ちで、女子の先輩とかにモテそうな、そんな感じである。

癖のなく柔らかめの髪は男子にしては長めのショートボブで、そういった中性的な印象に拍車をかけていた。


「いや、もう良いですけど……それよりその『麻衣ちゃん』ってのが微妙にむず痒いです」


「わー。まる拒否られてるー。だっせーだっせー」


「お前らね、塩田君置いてきぼりだぞ……」


冷やかすジン先輩に菊池先輩の突っ込みが刺さる。

それに私も思わずはっとなった。


塩田君……とは、おそらくもう一人の見覚えのない男子生徒のほうだろう。

確かに完璧に置いてきぼりだった。
 
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