ちくわ部
とりあえず落ち着こうということで、ひとまずみんなソファに腰を落ち着ける。
今まで黙りこくっていた彼のネクタイの色は緑。私たちと同じ一年生だ。
さっきちらりと見た時に身長が高いのはなんとなくわかっていたが、改めて見ると……
細身で引きしまった長身に精悍な顔立ちで、野球でもやっていそうな体育会系の印象を受ける。
しかし緊張しているのか、表情は硬い。というか、無表情。仏頂面。愛想と余裕が見えない。
「んでだな。お前が喋ると話が進まなくなるから……」
そんな塩田君のことをひとまず置いて、菊池先輩はそう言いながら部室の奥に置かれた事務用デスクの上の本棚をがさごそと漁りだす。
そこからなぜかうちわを引っ張り出すとジン先輩に渡した。
「なんか喋りたいときはこれ挙げて。俺が指したら喋っていいよ。ただし発言一回につき三十秒以内ね」
そう言われてさっそくジン先輩はうちわを挙げたが、菊池先輩はスルーする。
なるほど、そういうことか……
これでジン先輩をスルーする体制が整ったらしい。
少し可哀想な気もするが、この人が散々ひっかきまわしたことを考えればある意味納得の仕打ちである。
妨害工作員が黙ったことで、真崎先輩が再び表情を明るくする。
右手でその長身の一年生を示しながら、朗らかな声で紹介した。
「そうそう。こっちが、俺が今日連れてきた仮入部の塩田 幸樹(しおだ こうき)。拾ってきた経緯は、ユウ先輩が麻衣ちゃん拾って来たのとだいたいおんなじでーす」