ちくわ部
 
俺も色々あるしー、などと言いながら菊池先輩が腕を組みつつ頷いていたその時、うちわを手放していたジン先輩がまたうちわを持つと、一度だけべしん、とテーブルを叩いた。

暫く黙っていたジン先輩の、久々の要求。

それの意味を汲もうとしたのか、菊池先輩はちらりとジン先輩を見ると、いいよ、と呟いた。


「俺はー、がんばるのがめんどくさかったから、かなっ!」



しかしやっと発言権を貰ったにしては、すごくどうでもいい事だった。



そして部室に来て一時間ほどが経っただろうかという頃、菊池先輩はちらりと壁の時計を見上げる。


「うーん、もうこんな時間。悪いけど俺帰るね。ジンとハル、あとよろしく。それじゃまた明日」


そう言いながらさっさと鞄を掴むと、言い終える頃にはもう部室の外。

こちらがどうこう言うより前に、向こうの行動が終わっていて……呆気にとられてしまった。

そういえば菊池先輩、前回私がここに来た時も最初に帰っていたような……?


「こないだ来た時も早かったですよね。菊池先輩っていつも帰るの早いんですか?」


「うん。だいたい一時間くらいで帰っちゃうことが多いよー」


発言を咎めていた菊池先輩がいなくなったからか、誰に許可をとるでもなくジン先輩が口を開いた。

菊池先輩はどうやらわりと忙しい人らしい。

それなのに部長として毎日顔を出して……単に三年生が菊池先輩しかいないから部長になってしまったのだろうか。
 
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